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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「未だ生む気だったのかい?」

「オホヽ」

「何が可笑しい?」

「まあ」

「笑いごとじゃないよ」

「あなたは憤っていらっしゃるの?」

「うむ」

「何がお気に召しませんの?」

「子供が多過ぎる」

「そのことなら、あなたよりも私の方が余っ程憤りたいくらいよ」

「何故?」

「次から次と生んでばかりいて、ナリも形もないじゃございませんか? 余所の奥さん方のように、物見遊山に出るではなし……」

「操!」

「何でございますか?」

「その態度は何だ?」

「…………」

「俺はもう憤っていると言って断っている。お前は文句を言っちゃいけない」

「はい」

「ニコ/\笑っていなさい」

「今笑いごとじゃないと仰有ったじゃありませんか?」

「口答えをしちゃいけない。俺が先に憤っているんだから」

「はい」

と妻は約束だから仕方がない。

「考えて見ると、迚もやり切れない」

「それじゃ何うなさいますの?」

「学校をやめようと思う」

「まあ!」

「恒男はもう十七だ。来年は高等学校へ入れなければならない」

「こゝの高等学校へ通わせれば宜いじゃございませんか?」

「高等学校は兎に角、今のような境遇じゃ大学へ出せない。その頃になって御覧。中学校女学校と下が続々だ。