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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「友ちゃん、木の根で頭をこくれ」

と徳さんが寄って来た。

「よし」

と私は国分の頭を両手で捉えて、木の根へコツ/\当てた。この方が撲るより痛い。

「何うだ?」

「…………」

「これでもか?」

「もう宜い」

「あやまれ」

「…………」

「これでもか?」

「悪かった」

と国分も竟に観念した。放してやったら、起き直ってボイ/\泣き出した。

「友ちゃん、序だ。此奴等もやってしまえ」

と徳さんは三人を睨んだ。

「僕達は何にも関係ない」

と三人は後退をした。

「いや、ある。友ちゃん、修学旅行の時のは此奴等だろう?」

「然うだけれども、あれは国分に煽てられたんだからもう宜い」

と私は国分丈けで草臥れていた。

「兎に角、あやまれ」

と徳さんは撲り兼ねない権幕だった。

「失敬しました」

と三人は私にあやまった。同級の有志が鳥居のところまで来て見物していた。

私はこの日をもって模範生を脱却した。国分はもう私に頭が上らない。他の連中も私を恐れ始めた。以来私は卒業まで餓鬼大将として押し通した。子供のことを小さな野蛮人というが、実際然うだ。野蛮人社会に聖人君子を気取っているほど損なことはない。私は国分を撲って、初めて存在を認められた。