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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「僕こそ」

「早速ですが、安部君」

「何ですか?」

「便所は何処ですか?」

「一番下です」

「下の何の辺ですか?」

「一緒に参りましょう」

と安部君が案内して行った。

「ひどい奴だなあ」

と私は呆れた。

「馬鹿だよ。群馬県の南瓜野郎は」

と野崎君は悪口を言った。

安部君はその頃から弁才に長じていた。私達に較べると社交的でもあった。群馬県を便所へ案内した序に部屋から自分の椅子を持って来て、明治学園の過去と現在を滔々と語り出した。

「一体に振わない学校ですよ。建物の大きいのは見かけ倒しです。生徒よりも先生の方が多いんですからね。高等学部は生徒が十人以上あったことはありません」

「そんなに尠いんですか?」

と私は今更驚いた。

「新入生は君達三人きりですか?」

「然うだそうです」

「それじゃ一年級はこの四人と後五人ですよ。二年が二人です。三年は一人いたのが死んでしまったから、悉皆で十一人ですよ」

「はゝあ」

「高等学部が一番振いません。その次は神学部です。十二三人いましょうかな」

「神学部って何ですか?」

と野崎君が訊いた。

「基督教の牧師を養成するところです」

「本当の耶蘇学校ですね?」