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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

と二人はグラついていて、何方へでも傾ぐ。その折の気分次第だ。

そこへ廊下から部屋を一寸覗いたものがあった。

「誰だい?」

と野崎君が咎めた。実に威張りたがる男だ。

「僕です」

「僕じゃ分らない」

「安部です」

「何か御用ですか?」

と私は野崎君を遮って、立って行った。喧嘩を始められては困る。

「あなた方は高等学部へお入りになったんですか?」

「はあ」

「僕も高等学部のものです。今帰って来たばかりです」

「然うですか? 失敬しました。僕達は新入生ですから、何うぞ宜しく願います」

「僕も新入生です」

「しかし中学部からお入りになったんでしょう?」

「はあ」

「それじゃ先輩です。何うぞ宜しく」

「僕こそ」

「お入りなさい」

と赤羽君が歓迎した。

これが現在○○教会の牧師として都下の基督教教役者間に相応重きをなしている安部君だった。

「僕は安部です。ヤンチャンですから、何うぞ宜しく」

「僕は河原と申します」

「僕は野崎喜三郎、乱暴ものです」

と野崎君は肩を怒らせて睨んだ。

「僕は群馬県の産、赤羽明と申します。今しがた入ったばかりで勝手が分りません。何分宜しく」

と赤羽君は丁寧にお辞儀をした。