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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

という註文だった。居並ぶ先生方が笑った。頭数を多く見せたいという苦心が現れていた。

式は讃美歌で始まった。

私は信者だから心得があった。しかし野崎君と赤羽君は初めてらしかった。安部君と吉田君は大きな声で歌った。因みに西洋婦人がオルガンを弾いた。丁度私の真前だったから、私は好奇心をもって眺めた。西洋人の女というものは郷里で二三度見かけたばかりだった。その一人は顔に網を張っていた。網は妾の印だと聞いた。何分、日露戦争前の田舎漢だ。そこを念頭に置いて読んで戴きたい。

讃美歌が終ると、猪股先生が聖書を朗読して、お祈りを始めた。

「在天の父よ……今回、新学年と共に曾つてない多数の有為な青年を私達にお与え下すったことを深く感謝申上げます。前学年の入学者は三名でございました。その中一名はお召しによりまして、お手許へ参りました。その前年の入学者は一名でございました。これもお召しによりまして、お手許へ参りました。その又前年は四名、中一名はお召しによりましてお手許へ参りましたが、残る三名は無事卒業、目下社会へ出てそれぞれ仕事を探して居ります」

と猪股先生のお祈りは、後から安部君に聞いて承知したが、会衆への報告を兼ねている。