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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

と呼ぶものがあった。

「野崎君と赤羽君だ」

と私は振り返った。

「待てよう」

と野崎君は手を挙げて、赤羽君諸共駈けて来た。

「御散歩ですか?」

と安部君が訊いた。

「いや、これです」

と野崎君は持っていた煙草を見せた。

「寄宿舎じゃ吸えないから、この辺まで出て来るんです」

と赤羽君もスパ/\やった。

「いけないぜ、野崎君。君はもうやめると言ったじゃないか?」

と私は態と大袈裟に咎めてやった。

「申訳ない。三日坊主だ」

「駄目だなあ。静岡県は」

「群馬県が誘惑するんだもの」

「ハッハヽヽヽ」

と赤羽君は膝を叩いて笑い出した。

「二人で時々散歩に出る道理が分ったよ」

と私は思い当った。

「まあ/\、勘弁してくれよ」

と野崎君は責任を感じているようだった。

「構わないよ。君の勝手だもの」

「もう信用しないかい?」

「そんなことはない」

「勉強は大にする。到頭落ちつく決心がついたんだから」

「もう宜いよ。冗談に言ったんだよ」

と私は気の毒になった。

四人連れ立って歩き始めた。

「安部君」

と赤羽君が話しかけた。

「何ですか?」

「煙草は何故いけないんでしょう?」

「さあ。分りませんな」

と安部君は明答を避けた。