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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
不可能だ。またしても不可能事が行われたのだ。しかも今度のは、明智すら解くすべを知らぬ謎であった。
「あまりにあばき過ぎたので、犯人めたまらなくなって、こんないたずらをしたのですよ。だが、僕はそうされれば、される程、余計あばいてやりたくなる男です」
明智は何を思ったのか、アトリエの隅から、彫刻用の槌を拾って来て、いきなり、傷ついた三人の裸女の、顔といわず、胸といわず、たたき始めた。
バラバラと飛散る石膏。一槌ごとに、むき出しになって行く、裸女の腐肉。
かくて、夕闇のアトリエに繰拡げられた、時ならぬ地獄風景は、ここに細叙すべく、あまりにも無残である。凡て読者の想像に任せる外はない。
作者はただ、その群像の中に、三人の若き女の死体が隠されていたという事実、死骸には一面に白布を捲き、その上から石膏で塗りつぶしてあったという事実を、記すに止めなければならぬ。
いうまでもなく、即刻、このことが所轄警察と警視庁とに報ぜられ、警官達に続いて、裁判所の一行の来着となったのであるが、それは後のお話。
明智と三谷は、すでに見るだけのものは見てしまったので、最初にやって来た警察の人々に、事の顛末を語り、住所姓名を告げて置いて、直に、気がかりな畑柳邸へと、自動車を飛ばした。