轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
何かしら弾力のある、しかし綿よりはずっとかたい、でこぼこしたものが、足の下に感じられた。
あれは一体何であったのか、今よみがえった屍臭の記憶とむすび合せて考えると、ギョッとしないではいられなかった。
「でも、まさかあの井戸の中に……錯覚だわ。私の神経がどうかしているのだわ」
倭文子は、強いても、その恐ろしい想像を打消そうとした。そんなことがあるべき道理はないと思った。
やがて、屍臭とばかり思っていたのが、突然ほのかなバラのかおりとなった。と思う間に、今度は、誰かしらのみだらな体臭がにおって来る。過敏になった彼女の鼻が、幻覚を起したのだ。
その体臭は誰のものであったか。ふと情慾をそそる様なその匂いは、まぎれもなく、我が三谷青年のものだ。
併し、アア、またしても、その匂いが、突然彼女の嗅覚の古い記憶を呼び起した。それは三谷の体臭であると同時に、どこかしらの、もう一人の男の体臭でもある様な気がした。
誰だったかしら。誰だったかしら。
「オオ、そうだ。あいつの匂いだ。マアあいつの匂いだわ」
倭文子は、この恐ろしい一致に、途方に暮れてしまった。
「あれから、長い間、私はどうして、そこへ気がつかなかったのでしょう」