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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
移動撮影の映画を見る感じだ。
怪物の眼は、歩きながら、格天井の、例の一寸法師が隠れた一こまに、釘づけになっている。彼は、あの奇妙な屋根裏への通路を、ちゃんと知っている様子だ。
やがて、正面の壁の中程まで進むと、一体の如来座像の前に立止り、やっぱり目丈けは格天井を見つめたまま、そこへしゃがみ込んでしまった。一体何をしようというのだろう。
と、まるでそれが合図ででもあった様に、天井の例の個所に当って、カタンと妙な音がしたかと思うと、バッと風を切って、白銀の棒のように、蹲る怪物めがけて、投げつけられたのは、あの恐ろしい西洋短剣だ。
アア、第二の殺人! これだな!
と思った時には、マスクの怪人は、まるで軽業師のように身を飜して、短剣の軌道をよけていた。目にも止まらぬ早業だ。
よけながら、素早く短剣の紐を掴んで引きちぎってしまった。
「キャッ」
という異様な叫び声。続いてゴトゴト天井を走る足音。武器を奪われた一寸法師が、悲鳴を上げて、逃げ出したのだ。
マスクの人物は、部屋の真中においてあった小テーブルを、天井の穴の下へ引ずって行き、その上に椅子を二脚積み上げて、足場を作り、非常な身軽さで、それをよじのぼり、格天井のわくへ飛びついた。