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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「召使を残らず集めて下さい。何か見たものがあるかも知れない」
恒川警部の要求に応じて、召使一同、階下の客間へ呼び集められた。書生二人、乳母のお波、女中二人。
「お菊がいないが、どこへ行ったのか、誰か知らないかね」
斎藤老人が気づいて尋ねた。小間使のお菊の姿が見えぬのだ。
「お菊さんなら、さっき、シグマがひどく鳴いているのを聞いて、犬小屋を見て来ると言って、庭へ出て行きました。でも、それからもう大分時間がたっていますわ」
女中の一人が思い出して答えた。
シグマは先日の負傷以来、手当を加えて、庭の犬小屋につないであった。お菊は日頃、この犬をひどく可愛がっていたので、鳴声を聞いて病犬を慰めに行ったものであろう。
斎藤老人の命を受けて、書生の一人が、お菊を探す為めに、犬小屋のある裏庭へ出て行ったが、暫くすると、何かわめきながら、客間へ駈込んで来た。
「大変です。お菊さんが殺されています。庭に倒れています。早く来て下さい」
それを聞くと、警官達は驚いて、書生について裏庭へ駈つけた。
「ホラ、あすこです」
書生の指さす所を見ると、犬小屋から大分離れた、庭の芝生に、一人の女が、青白い月光に照らされて、仰向ざまに打倒れていた。