轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「オヤッ」
案内者の斎藤老人までが、頓狂な叫声を発した。
さっきの死骸は、影も形もなくなっているのだ。
まさか部屋を取違える筈はない。血みどろの男が転がっていたのは、あの黒い仏像の前であった。外の部屋にそんな仏像なんて、ないのだ。
老人は、うろたえて、窓際へ走って行って、密閉された二つの窓の掛金を検べて見たが、少しも異状はない。
全くあり得ないことが起ったのだ。死骸は溶けてしまったか、あるいは蒸発してしまったとしか考え様がないのだ。
老人は狐につままれた様な顔をして、キョロキョロとあたりを見廻しながら、
「まさか三人が、揃って夢を見たのではありますまい。私の外に、二人の書生が、確に死骸を目撃しておるのです」
と死体紛失が、彼の粗相ででもある様に、恐縮した。
恒川警部は、老人に、死骸の横たわっていた場所を尋ねて、そこの絨氈を検べていたが、
「あなたは夢を見たのでありませんよ。ここに確に血の流れた跡があります」
と絨氈のある個所を指さした。
絨氈の模様がドス黒いので、ちょっと見たのでは分らぬが、触って見ると、まだ指先に赤いものがついて来るのだ。
警官達は、この奇怪千万な出来事に、異常なる職業的緊張を覚え、手分けをして、室の内外を隈なく取調べたが、これという発見もなかった。