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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

花活の中

それは一挺のピストルだった。

「ピストル? どこにあった? 一件のか……」

と警部は昂奮して早口に訊いた。

「そうらしいです。一発発射しています。このピストルを見付けたのは、家政婦の部屋の中です」

「なに家政婦の部屋の中に、このピストルが……」

期せずして大寺警部と長谷戸検事の視線とがぴったりと抱き合った。

そのうしろでは、さっきまで睡むそうな顔をして欠伸を噛み殺していた帆村荘六が、今は別人のようなしっかりした表情になって、室内の誰からも一時忘れられているお手伝いのお末の、しなびた顔にじっと見入っていた――。

花活の中

ピストルの発見は、検察官一同を総立ち同様にまで昂奮せしめる力があった。

中にも、最も衝動を受けたのは主任警部の大寺だった。彼は、この事件の犯人を、今本庁に引いていって拘置してある土居三津子だと、自分の心の中には確信していた。只いささか満足するには欠けることは、三津子が旗田鶴彌を射撃するに使ったピストルが発見されないことであった。ところが今やそのピストルらしいものが、同じ惨劇の旗田邸の屋根の下に於て発見せられた。が、その場所がどうも気に入らない。