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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
検事は、先に亀之介が家政婦を誹謗したことを思出したから、このように訊いてみた。
「いいえ、亀之介さまの事ではございません」
と、家政婦は言下に否定した。検事は困惑を感じた。すると家政婦がつけ加えた。
「このお邸に出入りしている人達は、何かというと、わたくしを利用して悪いことをなさるのです。この年齢になるのに、こんなお邸に家政婦として温和しく朽ちて行くわたくしを、なんだって御自分の野心に利用したり、悪いことのはきだめにしたりなさるんでしょう。ああ、もっと早くそれが分っていたら、わたくしはこんなお邸へ家政婦などとして入るのじゃなかったんです」
家政婦は昂奮の極、大きな涙をぽたぽたと膝の上に落とした。
帆村は、このとき煙草の灰の落ちるのも気がつかない風で、家政婦の一挙一動に気を奪われていた。
「具体的にいって貰いたいですね。お手伝いのお末のことですか、それともあの土居三津子のことですか」
「それは申上げられません。今は何もいいたくないのです。しかしそのピストルは、決してわたくしが使ったものではございません。わたくしはこれまでにピストルというものに触ったこともなければ、ピストルで射撃したことも勿論ございません」