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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

第十四章

「じゃ、君と恋愛する女は不幸だね。君は結局、その女を誘惑するだけなんだ。恋愛じゃない。遊戯だ」

薄井はまた冴子の顔を見た。

「あなたがそう思うなら、そう思ってもいいですよ。あなたは一流恋愛の出来る人だから、大したものだ」

信吉はわざと薄井のワナにひっ掛って行った。

「君は危険な人物だ!」

薄井はそう言いながら立上った。そして冴子の肩をたたいて、

「――じゃ、また後で会おう。二流恋愛家に誘惑されるなよ」

「まア」

薄井はうしろも見ずに、喫茶室を出て行った。

信吉はむっとする前に、にやりと気味の悪い笑をうかべて、

「これで、もうこの女をものにすることがおれに与えられた課題になったぞ!」

と呟いた。

例によって、グリルで食事をすまして、

「『赤と黒』を取りに、部屋へ来る……?」

「…………」

「それとも、ここで待ってるなら、僕が取って来てもいいです」

「行きますわ!」

冴子はハッキリ答えた。

第十四章

『赤と黒』の歪められた読み方について。

信吉がにせジュリアンとなること。

冴子が露悪家に見えたこと。

冴子の手に力が入った事。

四五三号室――信吉の部屋。

昨日の様に向い合って椅子に掛けると、信吉は時計を見た。