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おんなきしゃのやくわり
女記者の役割
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1930(昭和5)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,039 字 · 32 页
「イヤ、そんな筈は無い、これは家庭の私事じゃ。娘の在所は暫らく訊かずに置いて下さい」
「――――」
白け渡った一座の空気を後に、園田氏はもう扉の外へ踏み出して居ります。
「もう一つお願いがあります」
「何です」
「金庫の中には、もう大事なものはありませんか」
「何んにもありません。残った機密書類は、外務省へ預けました」
「それでは、此事務所の警備をすっかり解いて、平常通りにして頂き度いものですが如何でしょう」
「と言うと――」
「犯人は、今晩か遅くも明日の晩、盗んだ機密書類を返すために、もう一度此処へ忍び込んで来ます」
「エッ、そんな事がありましょうか」
「それは確かです。電灯は煌々と点けて、五人も七人もの人間が、一と晩中見張って居ては、返し度くとも返されません。折角返そうという意志のあるのを、返させないのは嘘です。出来るだけ犯人に便宜を与えてやりましょう」
「何うなと宜しいようにやって下さい。書類を返して貰えば、これ程有難いことは無いのですから」
「お喜びになるにはまだ早いかも知れませんが、兎に角書類だけは、間違いなく返りましょう」
「どうか、そうあって欲しいものですな」