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おんなきしゃのやくわり

女記者の役割

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1930(昭和5)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,039 字 · 32 页

青空文庫

三

三

会長室に居残って、果てしもない幽鬱な冥想に耽って居た園田敬太郎は、帰って来た花房一郎の顔を見ると、僅かに平常の冷静を取り返しました。

「何んか手掛りがありましたか、花房君」

「あるとも、無いとも申し上げられません。それは兎に角、御紹介いたしましょう、これは関東新報の千種十次郎君、この事件について、何彼と助力して貰わなければなるまいと思いまして、私から頼んで一緒に来てもらいました」

「千種さん、イヤよく存じて居ります。ようこそ」

花房一郎の背後から進み出た記者を迎えて、園田氏の顔からは名残なく屈託の色が消えました。そして政治界や社交界で、飛ぶ鳥を落すと言われた持前の寛濶さに返って、鷹揚な笑顔さえ向けます。

「飛んだ御災難で――」

「いや、その事です、警視総監に無理を願って、特に花房君に秘密にしらべて貰うことになりましたが、何分事件が重大ですから御助力を願います。千種さんのような方が新聞記者としての立場から観察されたら、思いもよらぬ光明が見出されるか知れません」

千種十次郎を見た刹那は、幾分不満足らしい様子でしたが、練れた人物だけに、思い直して斯うわだかまり無く歓迎の手を差し伸べます。