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おんなきしゃのやくわり
女記者の役割
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1930(昭和5)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,039 字 · 32 页
六
異様な心持で、帰って行く子爵の後ろ姿を見送り乍ら、花房一郎は爪を噛みます。
「事件は非常に六つかしい、最初からやり直しだ」
「園田氏の娘というのが、此事件に何んか関係があるのかえ」
「あるかも知れないが、無いかも知れない。兎に角二た晩ばかり此事務所を空っぽにして、相手の出ようを見よう。俺の手にはもう切札は無い」
花房一郎は深沈たる顔を伏せて、底の知れない冥想に落ちて行きます。
六
その翌々日。花房一郎から千種十次郎へ、勝ち誇ったような電話が掛って来ました。
「千種君か、私は花房。――書類は到頭金庫へ帰ったよ、元の通りそっくり其儘だ。園田氏は大喜びだが、事件はこれからが本筋だ。若し手が空いて居るなら、大急ぎで外交研究会へ来てくれないか、待って居るよ。面白いことがあるんだ、素的に――左様なら」
言い度い放題の事を言うと、電話はプツリと切れてしまいます。
大急ぎで出かけて行くと、先夜クロロホルムで麻酔させられた書記の小柴が、もうすっかり元気になって、会長室へ千種を案内してくれます。会長室の前へ行くと、
「これで安心とは何うして言えないのです」
闥を通して、廊下まで筒抜けの園田氏の声。