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おんなきしゃのやくわり
女記者の役割
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1930(昭和5)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,039 字 · 32 页
二
「勇。大層な勢だな」
折から、闥を押して入った一人、足の勇は肩に手を置いて、眼は高城、園、某、某、と一座に会釈して居ります。
「エッ、吃驚させる、誰だ――何んだ兄貴か」
足の勇には大先輩、関東新報社の社会部長、千種十次郎という名記者です。
「馬鹿に驚くじゃないか、まるで兇状持見たいに――」
「厭な事を言いっこなし、兇状なんか持っちゃ居ないが、真っ正面に美しい方が居るから、一寸した事にも虫が起る」
「あらッ、早坂さん」
園花枝は、少し顔を染めて、足の勇をたしなめました。嬌嗔を発した顔は、咲き立ての芙蓉を見るような、香わしい美しさに輝きます。
二
「千種さん、一寸お顔を」
一足先に、カフェー人魚を出た千種十次郎は、闇の中から斯う呼び止られました。
「誰某です」
隣の洋品店の飾窓の前へ立ち止ると、ついて来て同じ灯の中へ顔を出したのは、ツイ今しがたまでカフェー人魚の隅っこに、一人で洋酒を嘗めて居た、勤人風の男でした。
「私が解らないかなア」
ソフトを脱って、顔を一つ撫でると、慧敏な隼のような男。
「アッ花房――」
紛れもないそれは、名探偵と言われた、警視庁の花房一郎です。