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おんなきしゃのやくわり

女記者の役割

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1930(昭和5)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,039 字 · 32 页

青空文庫

五

「上手が手を変えて下手には書けるだろうが、足の勇のような名題の悪筆が、どんなに手を変えたって、あんな器用な字が書けるわけは無い。勇はそんな事をする男じゃないよ。俺は保証する。それに、機密書類を盗んで、新聞に発表する気なら、社会部長の俺に相談をしないって筈は無い」

千種十次郎は必死と足の勇の為に弁じましたが、花房一郎の根強い疑念は、こんな事ではなかなか解けそうもありません。

五

「そんな馬鹿なことがあってたまるものか、足の勇は盗などの出来る男じゃ無い」

必死と抗争して見たところで、千種十次郎には一つも反証というものが無いのです。併し何を感じたか、花房一郎は強いて争おうともしません。

「よし、君の意見を尊重しよう。一つでも、二つでも宜い、犯人は早坂君でないという証拠を示して貰えまいか。僕もあの男はよく知って居る、大抵の事なら、あの快男子に汚名を着せたくないよ」

「証拠は沢山あるさ」

引摺られるように、千種十次郎は斯う言ってしまいます。

「例えば」

「例えば――」

名探偵と言われた花房一郎の見込みを、一瞬にして覆すような反証が、熱心より外には何んにも持って居ない素人の手に入るでしょうか。