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おんなきしゃのやくわり
女記者の役割
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1930(昭和5)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,039 字 · 32 页
機密書類が無くなって居る。これには園田氏も青くなったそうだ。一つ間違ったら腹切り道具だから。新聞へ機密書類の内容が掲載される前に、どんな犠牲を払っても取り返し度いというのも無理のない話だ。ところで、問題の性質上この事件は極く内々に始末をつけなければならない、うっかり新聞記者の耳にでも入ったら、大変なことになる。――尤も君も新聞記者だが――」
花房一郎は莞爾として振り向きました。千種十次郎は、不用意にこの名探偵の友情を見せられたような気がして、不安のうちにも、何んとはなしに心強さを感じます。
「暖かい所へ行って話そう、――事務所にはまだ園田氏が居られる筈だから、此機会に君を紹介してひと肌脱いで貰うことにして置き度い」
「僕でも役に立つような事があるか知ら」
二人はそのまま口を緘んで、永田町の方へ登って行きました。雲模様の冷い、風が、無人の坂道を吹き上げて、時々気違い染みた自動車が、恐ろしいスピードで二人の側をスッと飛んで行きます。
「何んという嫌な晩だろう」
花房一郎は、腹立たしそうに肩を縮めます。日頃快活な男が今晩に限ってこんなに不機嫌なのは、機密書類紛失という事件以外に、何んか人知れぬ屈託があるのではあるまいか、――千種十次郎は、フトそんな疑念に閉されて、肩を並べた探偵の横顔を差し覗きました。