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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
人にこの性情あればこそ人間交際の義務を達し得るなり。
古より世にかかる人物なかりせば、わが輩今日に生まれて今の世界中にある文明の徳沢を蒙るを得ざるべし。親の身代を譲り受くればこれを遺物と名づくといえども、この遺物はわずかに地面、家財等のみにて、これを失えば失うて跡なかるべし。世の文明はすなわち然らず。世界中の古人を一体にみなし、この一体の古人より今の世界中の人なるわが輩へ譲り渡したる遺物なれば、その洪大なること地面、家財の類にあらず。されども今、誰に向かいて現にこの恩を謝すべき相手を見ず。これを譬えば人生に必要なる日光、空気を得るに銭を須いざるがごとし。その物は貴しといえども、所持の主人あらず。ただこれを古人の陰徳恩賜と言うべきのみ。
開闢のはじめには人智いまだ開けず。その有様を形容すれば、あたかも初生の小児にいまだ智識の発生を見ざるもののごとし。譬えば麦を作りてこれを粉にするには、天然の石と石とをもってこれを搗き砕きしことならん。その後或る人の工夫にて二つの石を円く平たき形に作り、その中心に小さき孔を掘りて、一つの石の孔に木か金の心棒をさし、この石を下に据えてその上に一つの石を重ね、下の石の心棒を上の石の孔にはめ、この石と石との間に麦を入れて上の石を回し、その石の重さにて麦を粉にする趣向を設けたること