轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おそろしきつや
恐しき通夜
海野 十三
「新青年」1931(昭和6)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,092 字 · 30 页
だが彼の執念ぶかい両手は、なおも大尉の急所を掴んでそれを緩めようとはしなかった。この儘に捨てておくと、二人とも共軛関係において死の門をくぐるばかりだった。
「紅子、うう射て……ピストル、いいから……」
大尉の声は、切れ切れに、蚊細く、夫人の援助をもとめたのだった。
このとき紅子は、いつの間にやら、右手にしっかりとピストルを握りしめていたが、夫大尉のこの声をきくと、莞爾とほほえんだ。
「いいこと!」
紅子のしなやかな腕がグッと前に伸びる。キラリとピストルの腹が光って、引金がカチリと引かれた。
「ズドーン!」
銃声一発――大尉と学士とは、壁際から同体に搦みあったまま、ズルズルと音をさせて、横に仆れた。
ピストルの煙が、やっと薄らいだとき、仆れた二人のうちの一人が、フラフラと半身を起した。それは大尉にはあらで、意外にも星宮理学士だった。
彼は、紅子が一発のもとに射ち殺したのは、彼女の夫君である川波大尉だと知ると、咄嗟のうちに気をとり直し、威厳をつけて、ノッソリ起きあがると、フラフラと紅子の方に歩みよるのだった。
「星宮君。ここへ懸け給え」
このとき、静かに云ったのは、この場の生命のやりとりに、一と言も口を利かず、片腕もあげなかった奇怪の人物、大蘆原軍医だった。