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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

詰襟金釦の服を着て、林檎のような可愛い頬に、利口そうな目を輝かせながら、人々に一礼すると、ツカツカと明智の側に進みより、何か二言三言ささやいたが、明智の肯くのを見ると、入口に向って「お入り」と声をかけた。

すると、ドヤドヤと足音がして、二人の屈強な青年に、両方から抱えられるようにして、後手に縛られた小柄な真黒な人の姿が、部屋の中によろめき込んで来た。

それを一目見るや、宗像博士はギョッとしたように立上り、キョロキョロとあたりを見廻していたが、何を思ったのか、いきなり表の道路に面する窓の方へ走り寄った。

「宗像君、その窓を開けて、下を覗いてごらん。中村君の部下の私服刑事が十人ばかり、今にも君がそこから飛降りるかと、手ぐすね引いて待ち構えているんだよ」

刑事部長も捜査課長も知らなかったけれども、中村警部は明智の依頼によって、予め部下のものを、このレストラントの周囲に張りこませて置いたのである。

博士はそれと聞くと、素早く窓の下を一瞥して、明智の言葉が嘘でないことを確かめたが、何かきまり悪げに、しかし、なおも虚勢をはりながらノロノロと元の席に戻るのであった。