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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

見れば、その握りの部分全体に、厚紙を丸くして被せてある。

「指紋だね」

「そうです。消えないように、十分用心して来ました」

丸めた厚紙をとると、下から銀の握りが現われて来た。

「ここです。ここをごらん下さい」

小池は握りの内側を指さしながら、ポケットから拡大鏡を取出して博士に渡した。博士はそれを受取って、示された部分に当てて見る。警部が無言で横からそれを覗き込む。

「オオ、三重渦状紋だ!」

木島助手が持帰った靴箆に残っていたのと、寸分違わぬお化けの顔が笑っていた。

「このステッキは?」

「その黒眼鏡の男が忘れて行ったのです」

「そいつはアトランチスの定連かね」

「イイエ、全く初めての客だったそうです。木島君が帰ると、間もなくそいつも店を出て行ったそうですが、今朝になっても、ステッキを取りに来ないということです。多分永久に取りに来ないかも知れません」

アア、小柄で華奢な黒眼鏡の男。そいつこそ稀代の復讐鬼なのだ。お化けのような三重渦巻の怪指紋を持った悪魔なのだ。

「とりあえず、それだけ御報告しようと思って。それから、このステッキを先生にお調べ願いたいと思いまして、急いでやって来たのです。