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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

02 第二分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页

青空文庫

――藤吉郎には、小癪に思えて、余り交わりをしなかった。

「藤殿、御非番か」

中門の番士と、藤吉郎が今、立話していると、こう声をかけて、通り過ぎた者がある。

何気なく、振り向くと、前田犬千代。――今も今、門番から、きょうは何処かへお使いに出て、御城内にはいない筈――と聞かされていた犬千代であった。

「やあ。……しばらく」

追いすがって、

「犬千代どの。ちょっと、折入って、お話し申したいことがあるが」

藤吉郎が云いかけた。

すると、犬千代は、例の眼ざしで、そしてまた、藤吉郎よりも、ずっと優れている上背丈から見下して、

「公用か。私用か」

「折入ってというからには、私用でござるが」

「然らば、今はならぬ。君公のお使いを帯びての帰り途。私語は憚る。後にいたせ」

膠もない。

つッつと、行ってしまった。

「嫌なやつだ。しかし案外、いいところもあるやつだ」

藤吉郎は、取り残されて、ぽかんとした顔したが、やがて、首を一つ振ると、自分も大股に立ち去った。

城下へ出た。

桐畑のわが新居へ来てみたのだ。すると、門を洗っている者があるし、荷物を担ぎ込んでいる者もある。

「おや、門違いしたか?」