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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
02 第二分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页
――けれど何処の組で働こうと、御奉公は一つと思って」
「そうだ。その通り」
藤吉郎は、そういって、後の者は問わなかった。
恐らく、自分の組下で、戦死した者もあろうが、幾人かは、他の組へ紛れこんで、生きているであろうと思った。
いや、箇々の兵が、乱軍で皆、その所属を見失ったばかりでなく、木下組の小隊そのものが、すでに本陣とも、主隊の浅野又右衛門の軍からも離れて、迷子になっていたのだった。
「――ほぼ勝敗はついたらしいぞ」
藤吉郎は呟きながら、部下を率いて、元の道へ引っ返した。四方の山から沢へあつまって来る濁水は、風雨が霽れてから水かさを増していた。その水に洗われている死骸や、崖の途中に重なっている死骸の夥しさに、藤吉郎らは、生きている身が、奇蹟のような気がした。
「お味方の勝利だぞ。――崩れ立ったは敵。見よ、この辺に死んでいるのは、みな今川の本陣付の侍ばかりだ」
藤吉郎は、指さして、部下へ語った。道々見る敵の死骸によって、潰走して行った敵の主脳部の径路が彼にはやや分って来たからである。
だが、部下の兵らは、
「……はあ」
と、ばかりで、まだほんとのわれに回っていないし、凱歌をあげる気力もなかった。