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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

02 第二分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页

青空文庫

日常生活の一つとさえいえる程、折にふれ事にふれ、舞を舞った。武家の子女ならたしなみの一つとすらいえる程だった。わけて田楽舞とか幸若舞などは、武家の間に好まれた。天沢和尚が、武田信玄から、

(信長の好みは何か)

と、訊かれた折、

(信長どのの数寄は舞と小謡なそうでおざる)

と、答えたというはなしもある。

その信長は、清洲の町人で友閑という者を、時折城内へ召して、舞を見たり自身舞ったりした。

また、もっと後のことであるが、安土の総見寺で家康に大饗応をした時も、幸若や梅若に舞をまわせ、梅若が不出来であったというので、信長から楽屋へ、

(舞い直せ)

と、叱りにやったなどという例もある。

生きるにつけ、死ぬにつけ、武人が舞を舞った例は、その頃のはなしにも数えきれないほどある。

家康が高天神の城をかこんだ時に、城将の粟田刑部が、

(今生の思い出に、一さし舞いたい)

と、乞うと、

(やさしき心よ)

と、許して、刑部の舞う幸若舞の高館を、敵も味方も見たなどということもあった。

天正十年、秀吉が中国の高松城を水攻めにした折も、孤城五千の部下の生命に代って、濁水の湖心に一舟を泛べ、両軍の見まもる中で切腹した清水長左衛門宗治も、敵の秀吉から贈られた一樽の酒を酌んで、