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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

02 第二分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页

青空文庫

無理もないて」

「いや、成上がり者の小威張りほど、眼ざわりなものはない。得て、思いあがっているやつだ。いちど鼻ばしらを折ってやるのも、当人の身のためだぞ」

右近の部下は、手ぐすねを引いて、待っていた。

夕方の退出時。やがて彼のすがたが見えた。

春も夏も秋もない、例の青木綿の陣羽織である。厩衆はほとんど外勤めなので、それで役目も間にあうことは間にあうが、もう身なりなども、飾れば飾れない身ではない。それなのに、相変らず藤吉郎は、自分の身なりなどに費う金は少しも持たないらしかった。

「来たぞ」

普請奉行の下役たちは、眼くばせしていた。

藤吉郎は、木綿陣羽織の――大きな桐紋を背中に見せて、悠々と、通りかかった。

「待て」

「木下氏。待て」

呼び止められて、

「わしか」

藤吉郎は、けろりと振り向いた。

「――いかにも」

「何か御用か」

「されば」

と、下役は、彼の足を止めておいて、奉行の床几へ、何か告げに行った。

薄暮の工事場から、職方や人夫たちは、役人の点呼をうけて、ぞろぞろ帰りかけていた。

奉行の山淵右近は、左官棟梁や大工棟梁などを、自身の床几場へ集めて、あしたの作事について、何か評議中だったが、聞くと、