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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

02 第二分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页

青空文庫

三日普請

「不服か」

「恐れながら、悪弊になるかと存じます。なぜならば、てまえの申し条は正しく、彼の仕方は、御奉公に忠実とは申されません。あの程度の御修築に、二十日近くもかかって、なおまだ――」

「猿、待て」

「は」

「わしにまで、そちは、大言を吐くか。そちの演舌は、他の者より聞いておる」

「当りまえなことを申したまでで――大言とは、いささかも思いませんが」

「然らば、そちはあの工事を、幾日で仕遂げてみせるか」

「左様で――」

と、彼もすこし慎重になって考えていたが、即座に答えた。

「多少、手がついておりますから、後三日もあれば難なく竣工――と、存じますが」

「なに。三日」

信長は、声を放った。

柴田権六は、苦い顔して、真にうけている主君をむしろ笑っていた。――ただ犬千代は疑わない眼で、藤吉郎の睫毛のうごきまで、じっと見ていた。

三日普請

藤吉郎はその場で、主君から普請奉行の大役をいいつけられた。

山淵右近に代って、三日のうちに、城壁百間の修復をやってみろといわれたのである。

「かしこまりました」

彼は、おうけした。そしてすぐ退りそうにしたので、信長は、

「待て待て。汝、そのような安うけあいして、確かにやれるのか。