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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

と、書いてあった。

長嶋には今しもこの旗が林立していた。一揆の僧俗は七万をこえ、なお、一向僧の煽動にのって、鍬をすて、商いを抛って、自暴自滅の騒乱へ身を投じるものが日に増しふえるばかりだった。

(――男たるものは一歩も退くな。女たるものは一言も悔むな)

一揆に加わると、そういう誓詞を立てさせる。また宗祖親鸞のことば、

如来大悲の恩徳は

身を粉にしても報ずべし

師主智識の恩徳も

骨を粉にして謝すべし

…………

難行雑修自力のこころを捨て

一心後生にたすけたまえと

弥陀をたのむべし

と、あるような聖者の文章を、人間への光明と安心には役立てないで、破壊と騒擾を意図とする咀呪の歌として称えさせた。

信長の軍は、絶滅を期して、長嶋へ詰めよせた。

去年には。

この地方の、小木江ノ城の城主であった信長の弟、三七信興は殺され、城は一揆の者に奪われていた。

「弟三七のとむらい合戦」

とは、口にこそ出さないが、信長の胸にはあろう。全軍の将士は、もとよりそれを誓っていた。

だが。

長嶋は容易に破れなかった。

むしろ攻めれば攻めるほど強くなった。一心一向の称えそのままに凝り固まって戦う。