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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
、機を計っておざったが、その岐阜の手薄に乗じて、雷発一迅、三遠尾濃の諸州を一走りに、都までのぼりゆく心底でおざる。――さればことしの年越しは洛中にあって、正月も都で迎えることになろうとぞんずる。和尚にも、御健固におすごしあるよう……」
「左様かの……」
快川は、浮かない返辞だった。
兵事、政事、何事も和尚にただして、ふかく信頼している信玄は、その顔いろを観るに敏かった。
「和尚には、信玄の思慮に、なんぞ危惧をお抱きであろうか」
「……いや」
快川は、面をあげて、
「あなたの生涯の御大志じゃ、何で不同意なはずはない。……じゃが、おもしろうないのは、将軍義昭の小策である。頻りとあなたへ催促して来たような内書を、あなたのみならず、越後の謙信へもさし向けていると聞く。また、この夏六月、死去されたが、中国の毛利元就へも、同様、出兵をうながしておったらしい」
「その辺のこと、信玄も知らぬではございません。胸中の大策を天下に布くには、なんといっても、上洛せねば行われません」
「可惜、あなた程の人物を、甲斐の盆地に埋もれ果てさせてよいとは、わしとしても思いきれぬ。ゆくゆく御難儀は多かろうと思うが、御旗楯無のすすむところ、敗れた例しのないあなたの麾下だ。