轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

無言のまま。

そのひとみに、何かふかい感情がつつまれている。単に、敵の本城に接しただけのものでない。

自分の大軍をもって包囲しているこの城中には、わが妹のお市の方が、城主の妻となってから、もう四人の子まで生して、いまも暮しているのだった。

主従は、坐った。

秋草の花や穂が、ふたりの肩までつつむ。

眼の下の城廓を、あかず見つめていた信長は、その眼を、藤吉郎の面へ向けた。

「……さぞ妹は、兄を恨んでいよう。我意もいわせず、浅井家へ嫁がせたのは、この信長であった。――国を保つためには是非もない。わが家の犠牲になれといいふくめられて、泣く泣く輿にかくれて行ったお市のすがたが……。藤吉郎、いまも信長は眼に見えるようなここちがする」

「それがしも、よく覚えております。夥しいお荷物、美々しいお輿。飾り馬だのお供の人々にかこまれて、湖北へ嫁がれた日の御盛事を」

「お市は、まだ十五の、何もしらぬ処女だった」

「小さくて、お可愛らしい花嫁すがたは、王昭君のようでした」

「……藤吉郎」

「はい」

「そちにはわかるであろう、信長の苦痛が」

「それゆえにこそ、てまえも苦慮しておりまする」