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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
「そのためか。……火の手も煙も見えなんだが」
「もし、一の曲輪に、火の手が揚ったら、三の曲輪の人数が、直ちに城門をひらいて加勢に出よう。――加勢はやむを得ないとしても、大殿の御最期と共に、あなた様以下、奥方さま、和子さま達までも、火をはなって、炎のなかに御自害なさりはせぬか――それを敵は、いたく怖れての作戦かと考えられまする」
休太郎の気息は、そこまでが、いっぱいであった。突然、大地に爪を立ててもう一声、
「お、おわかれ申しあげます」
と、いったのが終りで、がくんと、手をついたまま地面へ顔をぶつけた。斬り死にしての戦死よりも多くの苦闘に剋って死んだ。
「……一魂、また逝く、ああ壮烈な散る華ではある」
誰か、長政のうしろで、つぶやく人があった。そう嘆じて、また低く、
「――なむあみだぶつ」
数珠の音がした。
ふりむくと、木ノ本の雄山和尚が、そこに佇んでいた。彼の浄信寺というのが先頃の兵燹に会ったため、小谷の城中へ来て共に籠城していた。
「……大殿も今朝がたはや御最期あらせられたそうな、お察しもうしあげる」
雄山がいうと、
「和尚。おたのみがあるが」
長政はわりあいに乱れずに云った。