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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

「大儀、大儀」

と、機嫌が直っていた。

翌朝。

暁起に嗽水して、彼は、ほぼ落成した御所の外廻りをここかしこ見て歩いていた。そして、皇居を拝し、陽の出る頃は、もう宿所の寺院に帰って、朝飯を喰っていた。

「戻るぞ」

上洛の折は、平服だったが、帰りは武装していた。――岐阜へ帰るのではなかったのである。

ふたたび姉川の戦場を一巡し、横山城に詰めている木下藤吉郎に会い、各所の押えとして残っている味方の部隊に令を飛ばし、佐和山の城を攻囲した。

佐和山には、浅井の家中磯野丹波守の手勢がなお立籠っていたからである。

「これで一掃除すんだ」

岐阜城へさして信長が帰ったのはそれからであったが、残暑の疲れを、彼も兵馬も、伸々、ひと月と休んでいる遑もなかった。

摂津の中之島の城にいる細川藤孝から「火急」として飛状が来た。――同時に、京都にある明智光秀からも、

摂津野田、福島、中之島一円に亘り、阿波三好党一万余、塁を築き、浮浪の徒を糾合候て、一揆に及び、門徒僧数千も加わり、本願寺門跡、これが背後の謀主たる由にて、勢い猖獗、寸刻の猶予もなりがたく覚えられ候に依而、早々、おさしず下し賜わるよう……