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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

極寒十二月、坂本の陣から帰ってくると、すぐ正月、また旅路と、持病のある彼のからだには、こたえていたにちがいない。ゆうべも深更まで側において、興のつきないまま夜更しをさせた。悪寒がすると呟いていたが、丈夫な自分にはつい思いやりが足らなかった。

「あいにくだ。供のうちに医者はおらんな」

「おりませぬ。薬は持参しておりますが、それも半兵衛どのの御持症に、合薬とは参りますまいし」

「飲ませぬよりはましではないかな。半兵衛の持病は、いつもこう熱が出る、咳こむ、その後、食物が細る……といったようなふうだが」

「さあ、それよりも、附近の農家へでも一時あずけて、静かにお寝かし申したほうが」

「むむ、至極道理だ。……わしは少しあわてたとみえる。ここは今浜だな」

「左様にござります」

「今浜ならば、丹羽殿の陣所があるわけ。まだそこへは遠いか」

「遠ござるが、そっと、負うて参るぶんには」

「胸を圧しては病に悪かろう。……はてな」

こんなにも当惑そうに案じる、主人の顔というものを家臣たちも見たことがない。しかし藤吉郎が、その竹中半兵衛重治ひとりを麾下に迎えるため、かつては栗原山の山中に七日も通って行き、慇懃三顧の礼をとって、ようやく彼に出廬の決心をさせた、あの熱意を思い合わせれば――さもあろうかと、家臣たちは、むしろ彼があわてる様をたのもしく