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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

だが、とにかく、どこか異っている。人凡ではない。

嘉兵衛は、そう観た。

で、その朝から、日吉を、邸の小者として、召使うことにきめた。

「仕えるか」

念を押すと、

「働いてみます」

平凡な返辞だった。

案外、欣ばない顔いろが、嘉兵衛にはすこし不満だった。

しかし、この木綿布子一枚の放浪児の主人として、自身が不足であろうかなどとは、考えられもしなかった。

松下家もまた、当時のどこの武家とも同様に、軍馬の訓練が厳しかった。

夜が明けると、邸内のお長屋から、槍や(革のしない)を持った侍たちが、ぞろぞろと籾蔵の前の空地へ出て行った。

――えやあッ。

――うおう!

――ヤ、ヤ、ヤッ。

槍は槍と撲りあい、は※(「革+稻のつくり」、第4水準2-92-8)とたたき合っていた。

台所番の小侍から門を守る小者の末にいたるまで、朝は一度、ここへ来て、交代に皮膚を赤くして行った。

嘉兵衛から云い渡しがあったとみえて、日吉が、小者の端に召し抱えられたことは、もう皆知っていた。

厩仲間は、新参と見て、

「おい猿。これから毎朝、おれたちがお厩の馬を、草を喰わせに曳き出したら、その後、すぐ厩を掃除して、馬糞を向うの竹やぶの坑へ埋けるのだぞ」