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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

そして、朝霧のかかった谷川の岸に出てそこで衣を脱いで行水をやった。皆黙黙として何人も一言を発する者がない。彼も同じように冷たい氷のような行水をした。

行水が済むと仙人の群ははじめの路を走って帰った。彼もその群に交って帰った。皆それぞれ洞穴を持っていた。行水から帰って来るとその日の行にかかった。全身の力を咽喉に集めて、わあと云う懸声をだした。それを一日に一万遍やることになっていた。彼も他人の使わない洞穴を求めてその懸声をはじめた。そして、空腹になれば木の実を探しに往った。それにも山の法則があって、他人の執りかけたものに手をつけることはできなかった。手をつけた印には木の葉を扱いてあった。そのうえに木の傍で喫うばかりで、持って来て貯えて置くことはできなかった。それがためにひもじくなれば二里も三里も遠くに木の実を執りに往くことがあった。

修業が積んで来るに従って体は枯木のように瘠せ、眼は垂れて福禄寿老人のようになって来る。そうなると月の夜など谷にむかってわあと声をあげると、虎や狼などが群をなして集まって来る。月の光の射した岩角を躍り越えてやって来る猛獣の姿は物凄かったが、彼等は皆猫のようにおとなしかった。