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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
※
(粋で、上品で、地位のある方よ、それで若旦那のことを思ってらっしゃる方って、ぜんたいなんだ)
広巳は考えた。
(若旦那の家には、お銭がたくさんあって、鮫洲大尽と云や界隈で知らないものはないが、そんな地位のある方には、こっちからどう思ったところで、どうすることもできない方だと云ったな)
しかし、広巳は海晏寺の前の榎の傍で逢い、それから八幡祠の境内で逢った女以外の女は、求めてはいなかった。
(その女といっしょなら、逢いたいが、外の女には逢いたくないな)
広巳は何時の間にか大森の魁春楼の裏門口に近いところへ往っていた。と、その時人の気配がして裏門から出て来た者があった。それは盛装した嫂のお高が血の色のない顔をして、一人の婢に送られて出て来たところであった。
(いけねえ)
広巳はそこの巷へ隠れて往った。
※
広栄は次の室で計算していた。黒柿の机に向って預金の通帳のような帳面を見い見い、玩具のような算盤の玉を弄っていた。
それは二時比で、外には絹糸のような雨が降っていた。広栄はやがて算盤を置いて、傍の硯箱を引き寄せて墨を磨りだした。
「旦那さま」
頬の赧い壮い婢が名刺を持って傍へ来ていた。