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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
※(ローマ数字12、1-13-55)
「そうだよ、俺の家には、魔がさしているのだよ」
「まさか、そうでもないだろうが、あまり迷信はいけないね」
「そうとも」
※(ローマ数字12、1-13-55)
お杉は三畳の微暗い茶室へ出て来て、そこの長火鉢によりかかっている所天の長吉に声をかけた。それは十時比であった。外出の千条になった糸織を着た老婆の頭には、結いたての銀杏返がちょこなんと乗っかっていた。
「それじゃ、おまえさん、往って来るよ」
黄ろな顔の狭長い長吉は、眼が見えないので手探りに煙草を詰めているところであった。
「どこへ往くのだ」
長吉の声は乾からびていた。
「どこだっていいじゃないか、聞いてどうするの」
お杉の声は憎にくしかった。
「どうもしねえが、聞いてみたところさ、だしぬけに往って来ると云うから、どこへ往くか聞いたじゃねえか」
「だから、聞いてどうすると云ってるじゃないの」
「どうもしねえが、聞いたっていいじゃねえか、家の細君の往く前ぐらい聞いたっていいじゃねえか」
「家の細君を、一人で出すのが心配になるとでも云うのかい」
「そうじゃねえ」
「それじゃ、毎日遊んで、細君に稼がしては気のどくだから、たまにはかわりに往ってくれるとでも云うのかい」