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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
※(ローマ数字2、1-13-22)
「そいつは豪いことになったものだ」
謙作はすこしも心にかけていないようなことを云い云い女の傍を通って外へ出たが、横街のほうは見ずにそのまま初めの街路を逃げるように歩いて往った。
※(ローマ数字2、1-13-22)
何時の間にか電燈が点いていた。謙作は洋食屋を出る時の物に追われているような気もちは改まって、ゆっくりした足どりになって微暗い黄昏の街路を歩いていた。
天気が変ったのか重んもりした空気が酒のある頬にそそりと触れて暖かった。彼の頭には自殺したと云う怪しい洋服の男の印象が残っていたが、それは何年も昔のことのようなまたちがった世界の出来事のような気がしていた。
ふと煙草のことを思いだした。彼はちょと立ち止まってステッキを左脇に挟み、衣兜に入れた煙草の袋から一本抜いて口に喞え、それからマッチをだして火を点けながら燃えさしのマッチの棒を地べたに捨て、ひと吸いしてから歩こうと思って、顔をあげて右側につらつらと眼をやった。
そこには電燈の明るい洋館の二階があって、その窓から長手な顔の女が胸から上を見せていた。女の顔はにっと笑った。謙作はその女の顔に見覚えがあるようであったからじっと眼を止めて見た。