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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
赤い花
※(ローマ数字1、1-13-21)
※(ローマ数字1、1-13-21)
明治十七八年と云えば自由民権運動の盛んな時で、新思潮に刺戟せられた全国の青年は、暴戻な政府の圧迫にも屈せず、民権の伸張に奔走していた。その時分のことであった。
東京小石川の某町に、葛西と云って、もと幕臣であった富裕な家があって、当主の芳郎と云うのは仏蘭西がえりの少壮民権家として、先輩から望みを嘱されていた。微曇りのした風の無い日であった。芳郎は己の家に沿うた坂路を登っていた。その附近の地所は皆葛西家の所有で、一面の雑木林であったが、数年前にその一部分を市へ寄附して坂路を開鑿したものであった。芳郎はゆっくりとした足どりでその坂路を登りながら、その日、午後四時から井生村楼に催される演説会の演説の腹稿をこしらえていた。それは芳郎が平生の癖で、熱烈火の如き民権論はこうしてなるのであった。
坂の右側には葛西家の新しくこしらえた土塀があり、左側には雑木を伐り開いた空地があって、それには竹垣が結ってあった。空地の中には四五本の梅の樹があって、それには白い花をつけていた。地べたの枯草の中からは春が萌えていた。
場末の坂路は静かで淋しかった。