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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
※
(それにしても、撲りつけたものが、己だと知れると、また何か云って来やしないか)
云って来たところで正義はこっちにある。
「何、戦に往ったことを思や、悪党の一人二人、なんでもないさ)
広巳の眼に己の入ろうとしている門が映った。広巳は驚いて足をとめた。それは己の家の母屋の門であった。
(おや、俺はどこからか帰って来たのか)
広巳は門の中へ入った。表庭との境いになった板塀の耳門が半ば啓いていた。広巳はその方へふらふらと往った。
庭の樹木も風に掻きまわされていた。広巳は兄の姿が見えないのかと思ってちょっと眼をやった。風を入れないためか室の障子は皆締めてあった。
(締めてあるな)
広巳はふと何かの気配を感じた。広巳の眼は白沙を敷いた地べたへ往った。そこにあの蛇が蠢いていた。
(出てやがるな、糞蛇)
広巳は忽ち蛇に憤りを感じた。広巳はそっと四辺へ眼をやった。
※
客座敷の方で不意に人声がした。
「どうだね、御主人、返事をしてもらおうか」
それは愛嬌のない詞であった。広巳はそれに耳をやった。次の室の障子が音もなくすうと啓いた。広巳は何人だろうと思って眼をやった。定七の顔とともに定七の一方の手が出てこっちを招いた。