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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

それは夏の晴れ切った日の夕方であった。六郎の馬が前になって堂の前まで往ったところで、馬が不意に物に狂ったように、身顫いしたために、六郎は馬から落ちてしまった。

「不届者、今度はすることにことを欠いで、馬から落したぞ」

壮い六郎は火の点いたように怒った。

「この堂を焼いてしまえ、不届至極の堂じゃ」

六郎はそう云ってから堂の方へ往った。堂の中には年とった僧が一人、眼をつむって坐っていた。

「こら、堂守の坊主、この堂は何物を祭ってある堂じゃ」

僧は眼を開いた。

「これは御所の女房周防殿が、女御のために建てた堂でございます」

僧は右の方を見返って、仏壇の上に据えた絵像と木像の方を見た。

「あれが、その絵像と木像とでございます」

「周防の女の絵像があっても、木像があっても、何時も俺に祟る堂じゃ、今日は焼き払う、その方は早く出よ」

「それでは、絵像と木像とをお渡しを願います、周防殿の云いつけもございますから」

「いかん、その絵像と木像とが俺に祟るから、そいつから一番に火をかける、早く出よ」

「でも絵像と木像とだけは」

「ならん、出よ、ぐずぐず云っておると、その方もいっしょに焼き殺すぞ」