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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

、なんだか己の顔を見ている者があるような気がするので、ふと見ると、わたしの側に婆さんらしいのが、すこし離れて乗ってるじゃありませんか。

この夜更けに、婆さんの癖にどこをほうついてたろう、嫁と喧嘩でもして、出て来たかも判らない、この比は、嫁をいびるよりか、姑をいびる嫁が多いなんて、ひどく婆さんの肩を持って、その方を見ると、黄ろな頬の肉の厚いちょいと因業らしい婆さんですよ。

セルのような白っ茶けたコートを着ているのです、なんだかいやなばばあだと、見ていると、前の方にいた車掌が来たのです、その婆さんの前ですよ、切符を切りに来たのでしょう。

それがどうでしょう、その車掌が、小さな男です、その車掌が婆さんの前に来たところで、婆さんの黄ろな顔がちらちらするようでしたが、そのままふと消えてなくなったのですよ、わたしは婆さんが起ったじゃないかと思ったから、見るとやっぱり姿が見えないのです、そこへ車掌が来たのですから、

(あの婆さんは、どうしたのです)

と、わたしが訊くと、車掌はへんな顔をして、

(婆さん、婆さんなんていないのですよ)

と云うのです。

わたしは婆さんのいた処に指をさして、