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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
(いや、あすこに今までいた婆さんですよ)
と、云うと車掌はなにか夢でも見ているのだろうと云うように、
(婆さんなんかいないのですよ)
と云うのです。
ちょうど電車が停って、私の前にいた三人の客がおりようとしているのです。わたしはその車にいるのが鬼魅がわるいので、なんの事も思わず、その客に跟いておりたのです、その客は皆電車の前を横に切って往くのです。
その時雪が降ってたか降っていないかは、もうわからなかったのです、わたしも前の人に跟いて往こうと思って、往きかけたところで救助網にすれすれになった処に蹲んで何か探している者があるじゃありませんか。
なにを探しているのだろう蟇口でも落したのか、それにしても電車が出たらあぶないから、運転手に注意してやろうと思って声を出そうとしたところで、電車が動きだしたのです。私は、
(あぶない、人だ)
と云うなり、その蹲んでいる者に手をかけたのです。その拍子にその蹲んでいた者が起ちあがるようにして顔をあげたのです。それがどうでしょう、車の中で見た婆さんの顔じゃありませんか。わたしはわっと云ったのですが、それといっしょにわたしは電車に触れて気を失って、病院へ担ぎ込まれていたのです」