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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

生のままの肉やロースにしたのや、さまざまの獣肉を店頭に吊した処には、二人の壮い男がいて庖丁で何かちょきちょきと刻んでいた。そこには三四人の客がいたが、その一人は耳輪をした支那人の老婆で、それは孫であろう五つばかりの女の子の手を握っていた。好く見ると老婆の右側に並んでいるのも、耳輪をした壮い支那の婦人であった。壮い婦人の右側には白痘痕のある労働者のような支那人が立っていた。

彼はふとここは支那人街だなと思った。彼はそう思いながらあたりに眼をやった。そこは狭い黒ずんだ街路になっていて、一方にも食糧品を売る店がごたごたと並んで、支那人がおもにそこを往来していた。大きな酒瓶のような物を並べた店も、野菜を並べた店も、乾して蛇とも魚とも判らない物や、また芋とも木の根とも判らない物などを並べた店も眼に注いた。その店さきのガラス戸や内の鴨居などには赤い短冊のような紙片を貼ってあるのが見えた。それは謙作が見慣れている支那街の色彩であった。

謙作は酒のことを思いだした。そして内地に帰って来て一箇月ばかりの間に飲み馴染んでいた灘の酒に、いよいよ別れて往かなくてはならぬと云う軽いのこり惜しさを感じて来た。