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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「この盗人」
洋服の男は跳ね起きるなり女の締めかけにしてあったガラス戸を開けて走りでた。
「もし、もし」
謙作と洋服の男のテーブルを受持っていた女給は、急いで洋服の男の後から追って往った。謙作はもしかすると今の女が、あの男の玉を盗んだと云う女優ではあるまいかと思った。しかし、それにしてもあまり現実にかけ離れている荒唐無稽に近い話であるから、その話と今の女をいっしょにすることはできなかった。謙作はふとあれは狂人ではあるまいかと思った。
もう時間はどうだろう、謙作はふと時間のことが気になった。彼は急いで手首の時計に眼をやった。時間は四時十分になっていた。
まだ二時間はあるが、ぐずぐずしていては、またどんな係りあいが出来るかも判らない、いっそ船へ往って船で飲もうと思いだした。謙作は勘定をして出ようと思って顔をあげた。朋輩の出て往ったのを気にしていた、三人の女給が、開いたガラス戸の側に立って外の方を見ていた。
「おい、姐さん」
謙作が右の指節で軽くテーブルの上に音をさすと、一人の女がすぐ来た。
「勘定をしてもらいたい、いくらかね」
女は皿と銚子を眼で読んでいたがすぐ価を云った。