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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

女はそう云い云い外套を畳んで二つに折って棚の上に置いた。謙作はテーブルの方に往きながら手首の時計に眼をやった。時計は四時四十分になっていた。

「私は、すぐお暇します、船に乗ることになってますから」

「それでも、まあ、すこしお話しくださいまし」

女はもう傍へ来ていて廻転椅子の口をこっちに向けて勧めた。謙作はそれに腰をかけて鉢の微白い花に眼をやった。

「さっきは失礼いたしました、私は独りこうやっておりますものですから、淋しくなると、つい独りであんな処へ出かけてまいりますの、でもさっきは、変な男に係り合って、びっくりいたしましたわ、どうしたと云うのでしょう、私に天華とかなんとか云いましたの、ね」

女は右横の椅子に腰をかけていた。

「そうですよ、ありゃ狂人ですよ、あれから豪いことがありましたよ、あなたは御存じないのでしょう」

「ちっとも存じません、私を追いかけて来るようでしたから、変な巷を抜けて逃げてまいりましたわ、何かありまして」

「あなたの後から、追っかけるようにして出て、あの前で咽喉を突いて死んだと云うのですよ、私は見なかったが、婢が後から往って、見て来ての話でしたよ、どうも狂人ですね」