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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「さあ、どうぞおあがりくださいまし、妹が大変御厄介になりましたそうで、さあ、どうぞ」
讓は何時の間にか土間へ立っていた。背の高い蝋細工の人形のような顔をした、黒い数多ある髪を束髪にした凄いようにな女が、障子の引手に凭れるようにして立っていた。
「ありがとうございます、が、今晩はすこし急ぎますから、ここで失礼いたします」
「まあ、そうおっしゃらずに、ちょっとおあがりくださいまし、お茶だけさしあげますから」
「ありがとうございます、が、すこし急ぎますから」
「待っていらっしゃる方がおありでしょうが、ほんのちょっとでよろしゅうございますから」
女は潤いのある眼を見せた。讓も笑った。
「ちょっとおあがりくださいまし、何人も遠慮のある者はいないのですから」
後に立っていた女が云った。
「そうですか、では、ちょっと失礼しましょうか」
讓はしかたなしに左の手に持っている帽子を右の手に持ち替えてあがるかまえをした。
「さあ、どうぞ」
女は障子の傍を離れてむこうの方へ歩いた。讓は靴脱ぎへあがってそれから上へあがった。障子の陰に小間使のような十七八の島田に結うた婢が立っていて讓の帽子を執りに来た。