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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
年とった男は前に来たものを見なおして云った。
「渡船からちょっと来た処の蘆の中へ、女子が入って往くのを見ましたが、それでございますか」
「どんな女子だろう」
「色の白い女子のように思いましたが」
「いよいよそれだ、その女子だ、その場所を教えてもらいたい」
旅人は迷惑そうな顔をして立った。
怪しい女は蘆を折り敷いた上に胡坐をかいて盗み集めたらしい金を算えていた。算えながら垂さがって来る頭髪を隻手で煩そうに掻きあげていた。その指の間は蛇の鱗のようにきらきら光った。
旅人を案内にして藤枝の一行が来た。怪しい女はその物音を聞いて蘆の葉陰から透して見た。数多の人影が眼の前にあった。蘆ががさがさと鳴った。女は金を包んだ風呂敷を隻手にして起ちあがった。
「それ逃がすな」
「討ちとれ」
抜いた刀が蘆の葉の間から見えた。女は走ろうとした。五六人の者はもう背後に迫って来た。女は風呂敷の中に手を差し入れて揮り返りざまにそれを投げつけた。銀や黄金がばらばらと追手の顔に当った。その金の光が彼等の眼に入った。女は続いて風呂敷の中の金を投げた。追手の人びとは落ち散る金を見て立った。金銀の財宝は蘆の中へ棄てられて往った。